随想目録

舞台オタク女子大生の雑考

初座長公演終幕

終幕

劇場から難波の雑踏を抜けて電車に乗る。電車の扉が閉まり走りだす。窓の外の景色が飛んでいくのをぼんやりと眺める。

舞台『弱虫ペダル』~箱根学園新世代始動~、推しの俳優が初座長を務めた舞台の幕が閉じた。

現状としてはただ呆然としている。舞台のハナシ自体の熱量、俳優たちの生み出す熱量、達成感、客席の感動、そういったものにただただ気圧されている。呆然としながら、熱の冷めないうちに思いを言葉に起こしていこうと思う。

 

 

「幸せだ!!」

4度にも及んだカーテンコールで、推しは叫んだ。「幸せだ!!」その言葉が胸に刺さり思わず涙が溢れた。

初の座長公演、しかも学校の代替わり、新世代の始動を背負う公演、なかなか捌けない大阪のチケット、仲間に加わる新キャスト、様々な不安が彼にのしかかっていたことが慮られる。その公演の真ん中にしっかりと立って戦った彼をまず褒め称えたい。

彼をデビュー作から応援してきたが、明確な形として彼の努力が報われるのを初めて目の当たりにしたような気がする。絞り出したような「幸せだ」という言葉に、私は、彼を応援してきて心からよかったと思ったし、自分の応援が、どれだけ些細なものだったとしても、彼のこの幸せの一端を微かにでも担えていたのかもしれないという、完全にカタルシスだが、最上の幸せを感じた。自分自身もなにか報われたような気さえした。

 

舞台『弱虫ペダル

ここで、推しから一歩離れて、舞台の総評を書きたい。

舞台『弱虫ペダル』は、若手俳優の舞台作品としては言うまでもないほどの有名シリーズである。2012年の初演以来公演を重ね、今回で9作目となる。

私は、舞台『弱虫ペダル』はものすごい熱量がとても冷静な緻密さで語られている舞台だと思う。気圧されるほどの熱量を持っているが精彩欠くことなく、どこまでも美しいのである。映像では初期3作品を見て、前回公演で初めて劇場に足を運んだのだが、映像で見る時以上に迫力と緻密さのアンバランスな融合に感動した。全盛期を作り上げた初期のキャストが卒業していった今でも、きちんと演劇できちんとエンタメな作品が丁寧に紡がれていて、シリーズとしての根強さの所以を感じる。

今作はライバル校である箱根学園をメインに据え、卒業する3年生の先輩との追い出しレースや新世代が新たなメンバーを迎えることによって新たに問題を抱え、それに立ち向かっていく様子が描かれている。心がうち震えるような熱さと、美しい舞台芸術の融合は贔屓目なしにしても面白く、普段若手の舞台を見ないひとにも見てもらいたいし、安心しておすすめできる作品だと思った。

私は今作にいたく感動した、こんな素敵な作品で推しが座長を務められたことがとても幸せである。作品に関わった方々には、感謝の言葉しか見つからない。素敵な作品をありがとうございました。

 

先へ

推しは来年、ミュージカル『薄桜鬼』原田左之助篇で、また座長として舞台に立つ機会をもらっている。ありがたいことである。デビューしてまだ3年ほどだがその努力が評価されてきたとともに、俳優としてどこまでやれるか見られている、試されているのだと思う。今年は彼にとって成長の年だったと思うが、まだまだ伸び代はある。もっともっと求められる役者に、見たいと思われる役者になってほしい。そしてまた、彼が舞台で幸せを発露させる瞬間を目撃したい。

頑張ってください、東啓介さん。応援しています。